宮崎駿『もののけ姫』のイメージモデルにもなった自然環境
日本の世界遺産は、その美しさや歴史的価値だけでなく、人々の信仰や精神世界を象徴する場所でもあります。訪れる人々は、そこで日本の文化や歴史、そして神秘的な世界観を体感し、心身ともに癒されることでしょう。本記事では、その中でも特に神々との邂逅を想像させる場所を紹介します。
沖縄県 屋久島
屋久島は、鹿児島県大隈半島南南西約60㎞の海上に位置します。宮崎駿『もののけ姫』のイメージモデルにもなった自然環境は、豊饒そのもの。山岳美は「洋上のアルプス」とも呼ばれます。海上の水蒸気が山々に多雨をもたらし、標高差と黒潮の影響もあって、日本の植物種の7割以上が群生。樹齢1,000年を超える屋久杉が多くみられるなかでも、縄文杉は樹齢7200年ともいわれる巨樹。5~6時間の登山の先に、縄文杉は待っています。
霊場に通ずる参詣道は祈りの道
和歌山県 紀伊山地の霊場と参詣道
古代から自然信仰の対象であり、霊験あらたかとされる紀伊山地。吉野・大峯(修験道の拠点)、熊野三山(熊野信仰の中心)、高野山(真言密教の根本道場)の3つと、それらの霊場に通ずる参詣道が、世界遺産として登録されています。なかでも熊野三山に至る熊野古道は、険しい山道ながら、祈りの道として有名。本宮大社、速玉神社、那智大社から成る神仏習合の熊野三山は、江戸時代に「蟻の熊野詣」といわれるほど、愛されてきました。
死骸すら神々しく感じる神の手の跡
北海道 知床
北海道東端のオホーツク海に面する知床半島と、その沿岸が世界遺産に登録されています。流氷によるプランクトンと、豊富な魚介類が生息し、河川を上るサケは秋、ヒグマなどに捕食されます。死骸は栄養素として陸地に還元。この食物連鎖が評価されたのでした。神様が手をついた跡とも伝えられる知床五湖や、雄大な知床連山など、観光名所は絶景。ウトロと羅臼間のみが主要道路であるために、現在も自然環境が保たれています。
神々は動物の姿になり人を試す
青森県、秋田県 白神山地
13万haにおよぶ白神山地は、青森県と秋田県に跨る自然遺産です。東アジア最大のブナ原生林をはじめ、約500種の植物が残る環境に、特別天然記念物のニホンカモシカやイヌワシ、クマタカなど絶滅危惧種の動物が生息しています。2,000種以上の無脊椎動物(昆虫など)も現存する生態系の希少価値が、世界遺産として認められたのでした。コバルトブルーが神秘的な十二湖を巡るコースや、ブナの森を歩く暗門の滝コースなど、幻想的な風景を観光できます。
人の原点を感じ、無辜の気持ちに還る場所
東京都 小笠原諸島
北太平洋に、30以上の島から成る小笠原諸島。列島から1000km離れ、大陸と陸続きになったことがありません。独自の生態系が保持され、固有種の比率も高く、種の進化を考察できる環境として「東洋のガラパゴス」とも呼ばれます。年中温暖、過ごしやすい気候のもとで約2500人が暮らし、父島と母島以外は無人島です。「おがさわら丸」が東京と父島を結び、片道25時間半、月5往復。諸島間は「ははじま丸」が週5回ほど運行しています。